今回は、クスリを飲んだ時に、どのように効果が出るのかを説明します。
クスリの効果がどう出るかを知ると、何か良いことがあるんですか?
クスリを使った時の効き方は、クスリの種類や使う人の年齢によっても様々です。特徴を知ることで、効くまでの時間や、飲み方の注意点なども知ることができます。
クスリを飲む時の注意点はとても気になります。
では、早速解説始めましょう。
クスリの運命とは?
クスリの生体内運命
クスリを飲んでから体の外に出るまでの順番はこうなります。
① クスリを飲む
②体内に吸収される
③目的地に到着
④目的地にクスリの成分がいっぱい集まったら効果発現❗️
⑤クスリは代謝され、尿中などへ排泄
⑥体の外へ排泄される
なんとなくイメージ出来ます。
この①から⑥までのことを「クスリの生体内運命」と言います。
運命ですか。。ちなみに、⑤の代謝って何ですか?
代謝とは、クスリが体の中で性質を変えられることです。主に、体の外に出やすくなります。
「効く」の種類
薬理作用とは
クスリが体に効くことを「薬理作用」と言います。
薬理作用を示すためには、クスリが目的地までいく必要があります。
クスリに目的地があるんですね。
そうです。目的地に着くと体の細胞にあるスイッチ(受容体)とくっついて効果が出ます。
安全なクスリの量とは
こはるさん。クスリを飲み過ぎると、どうなりますか?
クスリを飲み過ぎると、効きすぎて体調を壊すと思います。
正解です。
クスリを飲み過ぎると副作用の原因になります。
副作用ってよく聞きます。頭痛が出たり、フラついたりするんですよね。飲み過ぎは怖いです。
副作用は、クスリによって様々です。ただ、クスリが少な過ぎると効果が出ません。なのでクスリには、その人にあった適正な量が決まっています。
なにで決まるんですか?子供と大人が違うのは分かりますが。
そうですね。
体重や年齢でも変わりますし、腎臓の機能や性別・病気の重症度でも変わる場合もあります。
まずは、クスリの安全な量の説明を表で見てみましょう。
無効量 | 有効量(治療量) | 中毒量 | 致死量 | |
クスリの量 |
💊 |
💊💊 |
💊💊💊 |
💊💊💊💊💊💊 |
体の反応 |
効果なし😷 |
効果発現😄 |
副作用発現😨 |
死亡の恐れ👻 |
効き方の分類
次にクスリの効き方の違いについて見てみましょう。
クスリによって効き方に違いがあるんですか?
そうなんです。
クスリによって、効き方は様々です。一覧で見ていきましょう。
分類 | 作用名 | 特徴 |
作用発現様式 | 興奮作用 | 機能を亢進 |
抑制作用 | 機能を低下 | |
作用段階 | 直接作用 | 目的地に直接作用 |
間接作用 | 結果的に効果が現れる | |
作用部位 | 局所作用 | 部分的な効果 |
全身作用 | 全身に効果発現 | |
発現時間 | 速攻性 | 早く効く |
遅効性 | ゆっくり効く |
このようにクスリは、病気や使う人の特徴に合わせて効き方が様々です。クスリ自体の特徴でもあれば、各メーカーが工夫して効き方を調整している場合もあります。
「効く」のメカニズム
リガンド(アゴニストとアンタゴニスト)
リガンドとは、
体の中の目的地(薬物受容体:レセプター)にくっつく物質です。クスリの成分やクスリで活性化された物質のことを言います。
色々な「くっつくもの」を合わせてリガンドって言うんですね。
そうです。
リガンドは、アゴニスト(作動薬)とアンタゴニスト(拮抗薬)の2種類があります。アゴニストは目的地の受容体にくっつき、元気にしたり弱めたりします。アンタゴニストは、目的地の受容体に「ふた」をして、くっつけなくする役割があります。
アゴニストとアンタゴニストですか。似てるから覚えにくいですね。
否定的なことを「アンチ」とか言いますよね。「アン」は何かを邪魔すると覚えれば難しくないですよ。リガンドの種類を表にまとめてみましたので見いてみましょう。
分類 | 名称 | 特徴 |
生体反応 |
内因性リガンド | 体の中に元々存在する | 100% | |
アゴニスト | 完全アゴニスト | 内因性リガンドと同等の作用を示す |
100% |
部分アゴニスト | 同じ量を使っても、完全アゴニストより効果が弱い。 |
0〜100% |
|
逆アゴニスト | 受容体にくっつくことで活性スイッチをOFFにする。 | 0%以下 | |
アンタゴニスト | 競合的アンタゴニスト | 受容体に蓋をする。蓋は閉じたり外れたりを繰り返す。 | 0% |
非競合的アンタゴニスト | 受容体に外れない蓋をする。もしくは受容体にアゴニストがくっつけないように細工する。 | 0% |
アゴニストでも、受容体を元気にするだけではなくて、逆に落ち着かせる役割の物
もあるんですね。
アゴニスト=活性、ではなくて、アゴニスト=くっつく と覚えた方が良いですね。
アンタゴニストの拮抗作用
拮抗とは、作用がぶつかり合って効果が弱まることを言います。ここからは、アンタゴニストの拮抗作用について詳しく説明します。
さっき勉強した、競合的や非競合的もイマイチよく分かりません。
大丈夫です。
では、一覧で見て行きましょう。
作用 | アンタゴニスト | 作用方法 |
薬理学的拮抗 |
競合的アンタゴニスト |
アゴニストと受容体を奪い合う。受容体に一度ついても外れる。 |
非競合的アンタゴニスト | 受容体に蓋をしてアゴニストをくっつけない。受容体に一度ついたら外れない。 | |
受容体とアゴニストがくっつく部分とは別のところに作用して、アゴニストが機能しない細工をする。 | ||
部分アゴニスト | 弱いアゴニストでいっぱいになれば、結果的に反応は弱くなる。 | |
生理的拮抗 | 生理的アンタゴニスト | 違う受容体から出される、2つの相反する物質がぶつかり合い効果が減弱する。 |
化学的拮抗 | 科学的アンタゴニスト | アゴニスト自体を変化させ、効果を減弱させる。 |
何かを邪魔するにしても、いろんなやり方があるんですね。
同じところに効くクスリを同時に飲んでも意味がない場合もあれば、同じ目的でもクスリの目的地が違えばより効果が出るものもあります。
クスリの特徴を知ることは大切なんですね。
クスリの「効く」が変わる!?
薬物感受性とは
次に、「薬物感受性」について説明します。同じクスリで量が同じでも人によって効き方が異なります。
子供と大人が違うのは分かるけど、同じ大人でも効き方が違うんですか?
そうなんです。
人種、性別、年齢、遺伝子、持病などなど、様々な要因で異なってきます。
あの人には効くけど、私には効かない可能性があるなんて。。飲んでみないと分からないことがあるんですね。
ですから、クスリは飲み始めてからの体調の変化がどうなるかを、しっかり調べる必要があるんです。では、薬物感受性に関しての注意事項を5つ紹介します。
脱感受性(脱感作、急性耐性)
薬物の持続的な投与、もしくは短時間での頻回投与により起こる、急激な作用減弱。なかでも短時間の頻回投与によるものをタキフィラキシーと呼ぶ。
原因は、クスリの使いすぎで細胞膜上の受容体が減ってしまう(受容体ダウンレギュレーション)、あるいは受容体などから出てくる伝達物質が枯渇してしまったことなどがあげられる。
耐性
薬物の持続的な投与により徐々に作用が減弱していく。
原因は、受容体ダウンレギュレーションや、薬物と受容体との反応が弱くなる、薬物に対する拮抗物質の増加などがあげられる。
過感受性
作用部位でのアゴニストの枯渇により、受容体がアゴニストに対して過剰に反応すること。これは、アゴニストが減少した状態でも、体が生体機能を維持しようとしているために起きる。
原因は、受容体のアップレギュレーションによる情報伝達系の活性更新による。
反跳現象・離脱症候群
反跳現象とは、薬物を長期投与により耐性や過感受性が起きていた場合に、急に投与を中止することで、症状が急激に悪化すること。
脱離症状とは、反跳現象に加えて薬物使用前には無かった症状が現れること。
対策としては、薬物を徐々に減らしていく。
交差(交叉)耐性
交差耐性とは、全く同じ薬物でなくても、類似している薬物に対しても耐性が生じること。薬物の構造だけではなく、作用する経路・場所が似ていても交差耐性は生じる恐れがある。
対策としては、もし他の薬物に変更する時は、構造や作用経路が似ていない薬物を選択することで交差耐性を防ぐことができる。
まとめ
クスリの効き方には色んな特徴があることを理解出来ましたか。
はい。今まではクスリを飲んだら全て同じように効いていると思っていました。今度からはクスリの特徴を考えながら、先生の指示に従って、クスリを飲みたいと思います。
くれぐれも、自分の判断でクスリを増やしたり止めたりしないで下さいね。
ちゃんと飲みます!!
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