本日は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)について解説します。
聞いたことありますが、なんか怖いイメージの病気です。
アメリカのメジャーリーガーで、ルー・ゲーリック選手がALSになったことから、アメリカではルー・ゲーリック病とも呼ばれているそうです。
国会でも、れいわ新選組の方でいらっしゃいますよね。結構、話題になってました。
日本でも、約10000人の方が罹患しています。また年々増加傾向でもあるそうなので、身近にALSの方が居る場合も増えてくるでしょうね。なのでALSについての理解を深めていきましょう。
宜しくお願いします。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
概要
歴史
■ 1869年 フランスのシャルコーが発見
筋萎縮をきたす疾患の中から、脊髄の全角と側索の両方が障害され、経過も早い症候群を一つの症候群として確立した。
■ 1869年~1993年
対症療法のみの時代
■ 1993年 SOD1遺伝子異常の発見
活性酵素を不活化する酵素(SOD1)を作る遺伝子
■ 1995年 リルゾール誕生
グルタミン酸阻害剤で、日本では1999年に販売開始
■ 2006年 TDP-43の異常蓄積の発見
孤発性ALSの運動ニューロン細胞質
■ 2011年 C9ort72遺伝子異常の発見
■ 2017年 エダラボン承認
フリーラジカルスカベンジャーで、海外では2017年に承認された。
■ 現在
根本的な治療方法はない。
有病率
- 2~6人/10万人 日本全国で約10000人
- 発症年齢は、50~70歳代
- 男女比 男:女=1.5:1.0
- 発症部位 上肢50%、下肢20%、球症状30%
- 家族性発症 5%で、家族性のうち20%にSOD1遺伝子異常。
病態と症状
ALSは、上位・下位運動ニューロンがともに変性し、全身の筋力低下・筋萎縮をきたす神経変性疾患です。
全身の筋肉が萎縮していくんですね。
そうです。全身の筋肉ですが、眼球だけは病状が進行しても動かせるようです。
テレビでも、目の動きでコミュニケーションをとっている所を見たことがあります。
では、ALSが発症した場合に起こる症状や、病態を見ていきましょう。
初期症状
易疲労性、軽微な筋力低下などで発症し、進行すると全身の筋が萎縮し、眼球を除いて自分の意思で体を動かすことができなくなる。
合併症
1割の方で前頭側頭型認知症を伴う。
生命予後
- 50%生存率は日本では48カ月
- 50%生存率は世界でバラバラだが、原因は不明
発症部位
下位運動ニューロン
■ 延髄の運動系脳神経核
球麻痺(嚥下障害・構音障害、舌の萎縮)、舌の線維束性収縮により、飲み込めない、うまく話せないなどの症状が起こる。
■ 脊髄前角細胞
四肢の筋力低下・筋萎縮・線維束性収縮により、力が入らなくなり痩せていく。
上位運動ニューロン
■ 脊髄側索の錐体路
腱反射亢進・痙性麻痺・病的反射の出現などから、足が突っ張っていたい(こむら返り)や歩きにくいなどの症状が発現する。
治療
神経細胞の変性
薬物治療として、「リルゾール」「エダラボン」が使われます。根本的な治療ではなく、神経細胞の変性を遅らせるのに効果があるようです。
リルゾール
- 神経細胞変性の原因の1つとして、グルタミン酸の過剰が原因であるとされている。
- グルタミン酸の過剰な作用は、NMDA受容体などを介して細胞死を引き起こす。
- リルゾールは、グルタミン酸分泌の阻害を行い、NMDA受容体を遮断する。
- 3~6カ月程度の生存予後の改善が認められる
エダラボン
- フリーラジカルによる細胞障害から脳を保護する。
- 生存曲線の改善は認められていない
- ALSの重症度の進行を遅らせた。
現在(2021年3月)の治験情報
- 肝細胞栄養因子(HGF)髄注 東北大・大阪大
- ペランパネル(AMPA受容体拮抗薬)経口 東大
- 大量メチルコバラミン(B12)筋注 徳島大 → 600日の生存延長効果が得られた!!
- ロピニロール(ドーパミン作動薬)経口 慶応大
- ボスチニブ(白血病治療薬)静注 京都大
痙性麻痺
- リハビリなどで、関節可動域(ROM)の維持
- 肩のストレッチでは、上げ下げなどで亜脱臼を防ぐ。
- 歩行訓練では、1日30分、週3回が推奨される。※痛みを伴う場合は中止!
嚥下障害
- 食事にとろみを付けたり、経管栄養など
- ASL患者は代謝亢進が起こっており、摂取すべきエネルギー量は多い。
- 体重減少により生命予後が不良になる恐れあり。
- 体重増加で生命予後良好になる傾向あり。
構音・発話機能低下
コミュニケーションエイドなどを用いて、眼球運動などで意思疎通を図る
呼吸機能低下
早期の人工呼吸により、QOLの改善を図る
おわり
以上で筋萎縮性側索硬化症(ASL)の説明を終わりますが、いかがでしたか?
根本的な治療がないですし、そもそも予防方法もないなんて怖いですね。
色んなところで治療薬の開発は進められているようですが、早く製品化してほしいですね。
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