今回は、生体膜輸送システムのトランスポーターについて勉強していきましょう。
トランスが「移動・乗り換え」で、ポーターが「運搬役」って意味ですよね。
そうです。では早速、移動・運搬役のトランスポーターについて勉強していきましょう。
トランスポーターとは
トランスポーターとは
- トランスポーター(輸送体)とは、生体膜内外の物質(栄養素・薬物・毒物など)の運搬を行う。
- トランスポーターは、膜タンパク質の一つ。
- 濃度勾配を利用した受動輸送や、ATPを利用して濃度勾配に逆らった能動輸送などを行う
- 特定の物質が結合すると、一定方向に結合した物質を送り込む。
トランスポーターは、物質の移動・運搬役です。エネルギーを直接使った運搬や、濃度勾配を変えることで、間接的に運搬する方法など様々あります。
イオンチャネルとは違うんですか?
イオンチャネルは、エネルギーを使わない、濃度勾配だけを利用したイオンの通り道ですので、トランスポーターとは違います。詳しくはこちらで復習してくださいね。「10分で分かる!イオンチャネル」
トランスポーターの分類
トランスポーターを分類わけすると、
- イオンポンプ
- ABC(ATPーbinding cassette)トランスポーター
- SLC(solute carrier)トランスポーター
この3種類に分類されます。
イオンポンプは、なんとなくイメージできるけど、ABCとSLCは。。
それでは、詳しく見ていきましょう。
一次性能動輸送
一次能動輸送とは、「直接エネルギーを使う輸送体」です。トランスポーターで、一次輸送に分類されるのは、イオンポンプとABCトランスポーターの2つです。
イオンポンプは、イオンの運搬するんですよね。ABCは?
ABCトランスポーターは、イオン以外の分子を輸送します。
イオンポンプ
Na+,K+-ATPase
- 3個のNa+を排出して、2個のK+を取り込む
- 全ATPの30%以上が、このトランスポーターに消費される。
- 細胞膜に存在している
H+,K+-ATPase(プロトンポンプ)
- 2個のH+を排出して、2個のK+を取り込む
- 胃粘膜壁細胞に存在して、胃酸を生成する
ABCトランスポーター
P-糖タンパク質
- 疎水性低分子化合物を細胞外に排出する
- 基質選択性が低く、異物排出に関与する。
- がん細胞や血液脳関門、小腸に存在する
SLCトランスポーター
SLCトランスポーターは、ATPを直接使いません。一次性能動輸送の結果生じた濃度勾配を利用して、物質輸送を行います。
「solute」の意味が「溶質」で、「carrier」が「運搬」だから、溶質運搬人ってことですか。
SLCは、3つに分類されます。
- 共輸送
- 交換輸送
- 受動輸送
各輸送体の、作用と代表的なトランスポーターを見ていきましょう。
共輸送
- 一次性能動輸送によって生じた濃度勾配を利用する
- 複数の特定物質を、同一方向に輸送する
- 別名「キャリア」とも呼ばれる。
Na+/Cl –共輸送体
- Na+の濃度勾配を利用して、Cl –の取り込みを行う
- 腎臓に存在する
SGLT2
- Na+の濃度勾配を利用して、グルコースの取り込みを行う。
- 腎臓に存在する
NET
- Na+,Cl –の濃度勾配を利用してドパミンの再取り込みを行う。
- ドパミン作動性神経終末に存在する。
交換輸送(逆輸送)
- 一次性能動輸送によって生じた濃度勾配を利用する
- 複数の特定物質を逆方向に輸送する
- 共輸送同様に、別名「キャリア」と呼ばれる。
Na+/Ca2+交換体
- Na+の濃度勾配を利用する。
- 3個のNa+の取り込みと、1個のCa2+の排出を行う
- 細胞内Na+濃度に応じて逆方向の反応が生じる場合もある。
- 心筋や神経細胞に存在する
URAT1
- 有機アニオンの濃度勾配を利用する。
- 尿酸の取り込みと、有機アニオンの排出を行う。
- 腎臓に存在する。
受動輸送
ATPを利用せず、濃度勾配のみで特定の物質を単体輸送する。
GLUT2
- 濃度勾配に従って、グルコースやガラクトースなどを取り込む。
- 小腸や腎臓に存在する。
終わりに
以上でトランスポーターの説明は終わりでが、いかがでしたか。
色んなトランスポーターがあるんですね。わざと濃度の違いを作って、別の物を輸送させたりとか、大変ですね。
必要なものを取れたり、不要な物を排出したり、トランスポーターは忙しいですね。ちなみに、ATPの多くは、このトランポーターの輸送に使われているそうです。
私も、トランスポーターに負けないぐらいエネルギー消費します。
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