今回のテーマは「酵素」です。こはるさんは酵素と聞いて何を思い浮かべますか?
酵素といえば、ダイエットとかサプリメントとかですか?
怪しい酵素商品が出回っていますが、酵素とは「化学反応を助けるもの」です。
酵素を勉強すると何が分かるんですか?
「クスリを飲むと酵素へどんな影響があるか」が分かれば、クスリを飲む目的が明確になります。では、一緒に勉強していきましょう。
酵素について
酵素とは
- 酵素は、生体内の化学反応を助ける
- 酵素はタンパク質で、「基質特異性」といって特定の基質(標的)に反応しやすいように出来ている。
酵素って、お助けマン的な役割があるんですね。
特定の基質に対してだけなので、あなた限定お助けマンですね。
酵素の反応エネルギー減少効果
- 酵素(E)が基質(S)と反応する(E+S→ES)
- 基質(S)が生成物(P)に変化する(ES→EP)
- 生成物(P)は酵素(E)を離れる(EP→E+P)
- 酵素(E)はまた別の基質(S)と反応する(E+S→ES)
このように、少ないエネルギーで化学反応が進みます。
酵素が影響を受けるもの
温度
- 温度が上がると反応速度は上昇する
- 酵素はタンパク質なので、温度が高すぎると不活する。
- ヒトでの酵素活性の最適温度は35〜50℃
- 最も酵素活性が高くなる温度のことを「最適温度(至適温度)」という。
pH(酸性・アルカリ性)
- pHが変化すると、酵素の形が変わり基質との反応が悪くなる。
- 強酸・強塩基では不活する
- 酵素の活性が最も高くなるpHを「最適pH(至適pH)」という。
- 酵素によって最適pHは大きく異なる。
胃で働くペプシンの最適pHは1.5~2.0ですが、十二指腸で働くトリプシンの最適pHは8.0~9.0です。身体の場所によって全然違ってくるんですね。
補因子
- 酵素には、自分だけで活性を持つものと、補因子を必要とするものがある
- 補因子が必要な酵素で、補因子が結合した活性化酵素を「ホロ酵素」、補因子が結合していない不活性化酵素を「アポ酵素」と言う。
補因子が付いてなく、役に立たない酵素はアホ酵素か。。
アホじゃなくてアポです。。
アロステリックエフェクター
- 生体内に存在する、酵素反応を調整する物質
- 生体の恒常性(ホメオスタシス)維持するために、酵素の活性を促進・抑制する
- 酵素と基質が結合するのとは、別の部位と反応する。
基質・酵素濃度
- 基質濃度と反応速度は比例する
- 一定の濃度になると比例関係はなくなる
- 酵素濃度は、反応初速度と比例する。
ミカエリ定数(Km)
酵素の反応速度(v)=[その酵素の最大反応速度(Vmax)×基質濃度(S)] / [ミカエリス定数(Km)+基質濃度(S)]
- 酵素と基質との親和性を示す。
- Kmが低いと親和性は高い。Kmが高いと親和性は低い。
- 基質濃度とKmが等しい時、反応速度は半分(1/2)になる。
- Kmが小さい(=親和性が高い)酵素は、低い基質濃度で最大反応速度に達する。
ミカエリス定数は、酵素と基質の「仲の悪さ」ですね。
代表的な酵素
- 酸化酵素(オキシダーゼ)
- 還元酵素(レダクターゼ)
- 転移酵素(トランスフェラーゼ)
- 加水分解酵素(ヒドロラーゼ)
- 脱離酵素(リアーゼ)
- 合成酵素(リガーゼ)
色んなヒーローの名前みたいですね。
この酵素たちの特異的な基質の違いによって、名前がさらに変わります。例えば、トランスフェラーゼのメチル転移酵素は「メチルトランスフェラーゼ」という名前になります。
代表的な関連薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害による抗炎症作用発現
- 代表薬は「ロキソプロフェン」「インドメタシン」
α-グルコシダーゼ阻害薬
- α-グルコシダーゼ阻害し、2糖類から単糖類への分解を抑制する
- 代表薬は「アカルボース」「ボグリボース」
酵素と受容体
ここからは、酵素と受容体の種類と性質を見て行きましょう。
受容体って、スイッチみたいな所ですよね。スイッチ押すと酵素が動き出すんですか?
受容体は、リガンド(薬物など)がくっつくと反応するところで、こはるさんの言う通り「スイッチ」みたいなところです。酵素との関係は主に2種類あります。
- 酵素内蔵型受容体
- 酵素共役型受容体
次には、この内蔵型と共役型を詳しく見て行きましょう。
酵素内蔵型受容体
特徴
- 受容体に内蔵されており、細胞内側に酵素活性部位がある。
- リガンドが結合すると、2つの受容体同士がくっつく(重合する)。
- くっついた受容体は活性化して伝達物質を生成する
分類
チロシンキナーゼ型受容体
- リガンドが結合すると、単量体から2量体になる
- 受容体内のチロシン残基を、お互いにリン酸化して情報伝達を行う
- 主に細胞増殖や分化誘導に働く
代表的なものは、インスリン受容体など
セレン/スレオニンキナーゼ型受容体
- リガンドが結合すると、2量体のI型とⅡ型がくっついて4量体になる。
- II型がI型をリン酸化して、Ⅰ型が活性化して情報伝達を行う
- 主に、細胞増殖促進や分化誘導に加えて、アポトーシスにも働く
代表的なものは、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)受容体
グアニル酸シクラーゼ型受容体
- 元々2量体で存在して、リガンドが結合して活性化する
- グアニル酸シクラーゼが活性化すると、GTPからcGMPが作られる
- cGMP濃度が増えることで、プロテインキナーゼG(PKG)が活性化する。
- 主に血管平滑筋を緩めたり、腎血流量を増やす。
代表的なものは、グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体
酵素共役型受容体
特徴
- 自身には酵素活性部位を持たない
- リガンド結合により細胞内酵素を活性化する
作用機序
- 受容体は、細胞内のヤヌスキナーゼ(JAK)と結合している
- リガンドが結合したら、受容体は2量体になり、JAKがお互いをリン酸化して活性化する
- 活性化したJAKは、今度は受容体をリン酸化する。
- リン酸化した受容体に、シグナル伝達兼転写活性因子(STAT)が結合する。
- STATは、JAKによりリン酸化され2量体になり転写活性を促進する
この一連の反応を「JAK-STATシグナル伝達経路」と言う。
代表薬
JAK阻害薬として、間接リウマチ治療薬(トファチニブ)などがある。
終わりに
これで酵素の話は終わりです。いかがでしたか?
次々に色んな反応が起こって、覚えるのが大変ですが、ちょっとずつ覚えます。
まずは、酵素の特徴と大枠の分類を覚えていきましょう。細かい作用機序は、一気に覚えなくても大丈夫ですよ。
それなら、私にも覚えられそうです。
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