「影響力の武器」を職場に取り入れる6つの習慣

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影響力の武器とは

要約

 影響力の武器とは、人間の行動・判断のほとんどが自動的に決められている「行動原理」を利用して、人々を意図する方向へ誘導したり、有利な条件で承諾させたりする力(武器)のことである。

 一般に、特定の音や色・行動を見たり聞いたりすることで、決まった行動を取ってしまうことを「固定的動作パターン」と呼ぶが、この「固定的動作パターン」の性質を理解し、人々を操ろうとしている人達がこの情報過多社会には存在する。

 影響力の武器を理解し、人々を操ろうとする人の攻撃から身を守ることが、今の社会では求められている。また、今後さらに情報量が増え、人々の判断能力が低下していくと、ますますこの能力は必要になってくる。

 ただ、自らがこの「影響力の武器」を身につけ、職場や取引先での人間関係でうまく利用することも出来る。人間が感じるストレスのほとんどが「人間関係」であるならば、この武器により自らが望んだ方向へ導くことが出来れば、余計なストレスを感じることは無くなるだろう。

 本書に紹介されている6つの武器を理解し、取り入れ、そして習慣的に実践することが、今後の人生において大きな力となることは間違いない。

返報性

紹介

概要

相手から何かしてもらったら、何かお返ししなければならないと考えてしまう固定的動作パターン

特徴

1、最も威力が強い

子供の頃から「人に親切にしたら、きっと自分に返ってくる」という世間のルール(give&takeの精神)を叩き込まれて私たちは育ってきているため、返報性を無視することはこの絶対的なルールを無視することになるが、それは容易なことではない。

2、相手が望んでいない贈り物でも、この力は発動する

全く必要のないグッズが、寄付を求める封筒に入っているだけでも、寄付に応じた人の割合は18%から35%の2倍に増えた。

3、最初に受けた恩恵より大きなお返し(要求)にも応えてしまう。

試食や試飲などで、少量の食事を無料で提供されただけなのに返報性が働き購入してしまう。

コントラストの原理

 返報性を強める方法として紹介されているのが「コントラストの原理」である。方法は、初めは大きな要求をして、拒否されたら譲歩することによって承諾を得やすくなる。

コントラストの原理の特徴

承諾の取りやすさは、譲歩した後の要求の大きさに関係なく、最初の要求より小さければ良い。

 とある学生グループに「非行少年を動物園に連れていく」お願いをするという実験では、初めに「2年間毎週カウンセリングをする」お願いをし、拒否された後に、「動物園に連れていく」お願いをしたら、承諾成功率は17%から50%の約3倍も増加した。

「拒否されたら譲歩」の特徴

要求への承諾(合意)には、責任感と満足感が生まれる

 譲歩された条件にたいして、自らが合意することで、そこには「責任感」が生まれると同時に、条件を優位に進められたと言う「満足感」も生まれるため、返報性の力は効力が長続きする。

職場での実例紹介

返報性の種まき

  • 名前を覚える
  • 誕生日にプレゼントを贈る
  • 相手の分のコーヒーも買う
  • 仕事を手伝う
  • 労をねぎらう

返報性を利用した依頼方法

  • (笑えるぐらい)大きな要求から入る「1年間毎日お願いしたいところなんだけど、明日入れる?」
  • 困っていることを伝える「助けて欲しいんだけど、、」
  • 最後に理由(〜ので)を添える。「〇〇をお願いしたいのですが、、すぐ必要なので

コミットメントと一貫性

紹介

概要

何かを決定したり、ある立場をとることで、その後その決定に対して一貫した判断を下すようになったり、その判断や決定に沿った「都合のいい情報や証拠」を探すようになる。

一貫性が働く3つの理由

  1. 自分は信念、考え、行動が一致している人間だと思いたい。また他者からそう見られたいという欲求。
  2. 一貫性のある行動は、一般的に日常生活にとって有益であることが多い。
  3. 今後同じような状況に直面した場合に判断を下しやすくなる。思考エネルギーを節約できる。

効果的にする4つの条件

  1. 行動を含むこと
  2. 公表されていること
  3. 努力を要すること
  4. 自分の意志で選ぶこと

職場での実例紹介

コミットメントと一貫性を生む習慣

ある目標に対して現場での反応が悪い場合

  1. その目標に対して、目的(必要性)についての意見を聞き出す。
  2. 目標に向けて、現状において「出来ること」と「出来ないこと」を書き出す。
  3. 書き出された「出来ること」について、5W1Hを決めてもらう。

コミットメントと一貫性を育てる習慣

決めた行動に対して進捗がよくない場合

  1. 実際の行動内容を把握する。
  2. 複数の店舗やスタッフで行動内容や数値実績を共有する。
  3. 能動的な行動努力により、数値が改善されている様子を見える化する。
  4. 身近な目標達成する毎に、次の目標を決めてもらう。

社会的証明

紹介

概要

人々がそこで「何を信じるか」「どう行動するか」を決めるときに重要視しているのは、他の人がそこで「何を信じているか」「どう行動しているか」である。人間は、他の人が正しいと考えていることを基準にして、物事を判断する性質を持っている。

社会的証明を強力にする2つの要素

1、不確実さ

自分の決定に確信が持てない時には、より強力に他人の行動に対しての影響を受ける。

2、類似性

自分と似た他者の行動やリードに従う傾向がある

職場での実例紹介

社会的証明を使った話し合い習慣

会社方針を受け入れてもらう方法

  1. 業界全体の先行きの不透明さや危うさを説明する。
  2. 国の方針や業界他社の動向を把握し、当社の現状を説明する。
  3. どのような行動が、今後我々にとってプラスになるかを一緒に考える。
  4. その考えと会社の方針とを照らし合わせ、今後取るべき行動を共有する。

好意

紹介

概要

人は、交渉相手に対して好意を感じている場合、無理な条件の要求でも承諾しやすくなる傾向にある。

好意を引き出す5つの要素

  1. 身体的魅力 デブとマッチョでは2.5倍も結果に差がつく(ハロー効果)
  2. 類似性 自分と似た相手に好意を示す
  3. 称賛 お世辞と分かっていても自動的に肯定的な反応を示す
  4. 接触 馴染みがあるものには好意を示す
  5. 連合 関連があるだけ結びつきが生まれる 

職場での実例紹介

職員からの好意を引き出す習慣

  • 食事制限と運動で、メタボにならないように気をつける。
  • 現場に入り、同じ作業を共有し、悩みを聴く。
  • 普段の業務に対しての感謝や、その人の良さ・組織への貢献の内容を伝える。
  • 忙しくても月2回以上は現場に顔を出し、話し合いの時間を作る。
  • 公の組織とは別の名前でコミュニティを作り、結びつきを増やす。

権威

紹介

概要

何を言うかではなく、誰が言うかによって物事の伝わり方や影響力が異なってくる。それは、一般的に権威のある人は優れた知識と力があり、その人の行動に従うことが適応的であることが多い。そのため権威が影響力に及ぼす力は大きい。また、ほとんどの人が自分の受けている「権威の影響」を過小評価していた。そのため私たちは、権威の影響を自覚することは難しくなってしまう。

権威の3つのシンボル

  1. 肩書き
  2. 服装
  3. 所有物

職場での実例紹介

職場で権威の影響力を使う習慣

  • 重要事項については上位職の方からの指示をお願いする
  • スーツの着こなしや髪型などの身だしなみには最深の注意を払う。
  • 靴や鞄、名刺入れ、時計などの所有物は、常に手入れされた状態を保つ。

希少性

紹介

概要

希少性の原理とは、数が少ないものは貴重で価値のあるものだと判断しやすいことを利用した行動原理である。これとは別に、手に入りにくいことは自由を失うことという「心理的リアクタンス」に訴えかけ、人々は自由の喪失に対して反発し、希少品を欲すつようになる。その「心理的リアクタンス」は障壁が高いほど、また制限が強いほど強くなることが知られている。

希少性の原理を強化する2つの条件

  • 既に制限されているものより、新たに制限される時
  • 誰かと競争する時

実例

優秀な人材を集める方法

  • プロジェクトへの参加人数制限を設ける
  • 募集期間直前で参加人数の制限を減らす

参考文献

影響力の武器[第三版]

著者:ロバート・B・チャルディーニ

2014年7月10日 第1刷発行

訳者:社会行動研究所

発行者:柴田 敏樹

発行所:株式会社 誠信書房

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